はじめに
Ø 最先端テクノロジーとして、最近にわかに注目されてきた、トランステック(TransTech)。それは、トランスフォーマティブテクノロジー(Transformative
technology=変化を促す技術)のことであり、ITに脳科学や心理学を組み合わせ、人間の心身の成長をサポートするものである。またメンタル、感情、心理面において人間の心身の健康(Well-being、心身ともに満たされた状態)を実現するテクノロジーであり、人間の進化を支援する技術ともいわれる。トランステック・ビジネスの市場は広範な領域を含み、内訳としてはメディテーション、フィットネス、メンタル治療、神経テクノロジー、感情認識、ウエアラブルなど多岐にわたる。今後、市場規模は3兆ドル規模になるとの試算がある。
Ø トランステックが全世界に拡がろうとしているが、振り返って日本の関連市場を見渡してゆくと、すでにトランステックの萌芽が日本にあったといってもよいのでは、と思われることがある。弊社では、1994年に、『こころビジネス(ハイパーブレイン)に関する調査』を行った。当時注目された研究者や製品開発を調査したが、この中に、左右の耳からそれぞれ違う周波数の音を聴かせると、その周波数の差により、頭の中にうなり音が生じ、α波が出せるという製品を政木和三博士(1916~2002年)が開発していたという記載がある。当時、音楽業界のヒット曲ランキングなどを手掛けていた会社の社長は、人気や感動のメカニズムを研究していたが、この製品を上手に使っていくと、呼吸法や瞑想を行う時に、早く変性意識状態に入れると話していた。
Ø 現在、世界的にはマインドフルネス瞑想アプリの利用が拡がっている。同アプリは、世界的な新型コロナウイルスの拡がりを背景に、ストレスの軽減、集中力の向上などの目的で企業の社員向けや一般利用者向けに急速に市場拡大している。
Ø マインドフルネス瞑想アプリの世界市場規模は、2020年、375百万ドル(見通し)であり、2021年、550百万ドルと予測。5年後の2025年には、2,240百万ドルになると予測される。ここ数年高い伸び率で推移、2023年以降、年平均成長率は40%強で推移してゆくと見ている。キープレーヤーとしては、Headspace、Calmなどがあり、日本でもラッセルなどのマインドフルネス関連企業が注力している。
Ø マインドフルネス瞑想、あるいはヨガ、禅といったものが、ウェルビーイングにつながっており、ここにおいて、瞑想を核としたビジネスはトランステックの重要なフィールドとして発展してゆく可能性がある。瞑想の科学、意識テクノロジーの研究は、瞑想支援ハード、アプリ、サービスを拡大発展させてゆく。こうした技術はAI、ビッグデータ、生体センサーなどとも融合し、関連市場を活性化させてゆくと考えられる。
Ø ところで、「人間は自己実現に向かって絶えず成長する」という仮説をもとに、マズローは欲求5段階説を唱えている。調べてゆくと、トランステックの究極の本質は、5段階のさらに最上位に位置づけられる、「自己超越」欲求と考える研究者がいる。シリコンバレーのコンファレンスでは、Me+We=MWe (わたしから、わたしたちへ)という視点が論ぜられた。意識が高まってゆくことは、自分自身のことだけでなく、利他、他を思いやる心にもつながってゆく。豊かな社会づくりにも関係する。
Ø 2,400人の意識調査では、「瞑想することがある」と回答した人の71.0%が睡眠改善アプリに関心を持っている。また61.9%が脳波誘導シンプル機器に関心を持っている、また、61.7%が瞑想室(瞑想ポッド)に関心を持っている、ということが分かった。瞑想アプリサービス、支援機器システムの潜在需要は大きいと考えられる。当調査報告書は内外の市場動向、実際の需要動向調査をふまえ、トランステック、とりわけマインドフルネス瞑想関連の市場動向、市場予測、さらにビジネス戦略構想についてまとめた。当調査報告書が皆様のビジネス開発、研究開発、製品サービス開発に少しでも寄与できれば幸いである。
AQU先端テクノロジー総研
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