【未来への視点と調査研究者の気づき】 - 2009年初頭に感じたこと -
◆ビルゲイツが選んだ次の人生
私にとって、ビルゲイツは他人ではない。何年か前、私は新幹線に乗ったとき、そこに西和彦氏がいて、氏の講演「未来予測」を聞いたことがあっただけに、ビルゲイツの日本の友人としての氏の感性を通して、縁を感じていたからである。また、かつて名古屋の会社がつくったハローキティのロボットをビルゲイツが二台買い、一台は研究用に、一台は娘さんのために買っていったということをその会社の幹部から聞いていたからである。ビルゲイツは昨年、マイクロソフトの経営の第一線から離れ、奥さんらとともに、世界の子供達を救う慈善団体「ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団」の運営に注力するようになった。コンピュータの研究、経営で天才的手腕を発揮した彼が次に選んだ人生は、慈善事業ということだが、そのグローバルな発想、地球的価値観はいろいろ学ぶ点が多い。昨年11月、自家用ジェットで日本にやってきたという彼の講演を都内で聞いたが、子供を愛し、世界に貢献するグローバルな行動力に深い感銘を受けた。なお、ビルゲイツとともに、世界資産家のトップを走る、投資家のウォーレン・バフェットは374億ドルの資産のうち、85%にあたる310億ドルを同財団に寄付している。
◆ドッグイヤーからマウスイヤーへ、そして・・・
ドッグイヤーからマウスイヤーへ。田坂広志氏は米国シンクタンク・バテル記念研究所客員研究員を経て、シンクタンクの日本総研を立ち上げるなど、複雑系に関する著書、論述で知られる。たまたま、12月に渋谷で氏の講演を聞く機会があり、私は、運良く会場の中央で、聞かせていただいたが、氏はガイアシンフォニーの監督など、広く先端知識人との交流があり、その経験、見識は参考となる点が多い。とくに私の記憶に残ったことは、マウスイヤーである。マウスイヤーとは、インターネット登場以降の時代感覚のスピードが、さらに速まっており、ドッグの代わりに、マウスをフレーズに当てたものだ。犬は人間の7倍の速度で成長するといわれ、ネズミは人間の18倍の速度で成長するといわれている。ドッグイヤーという言葉に比べ、マウスイヤーという言葉はあまり聞かれないが、この言葉を聴いて、時代の変化スピードに乗り遅れず、かつまた、時間を超越した感覚を磨いてゆきたい、と感じたしだいである。
◆地方や地元の活性化からビジネスを広げてゆくという発想
正月早々、あるクライアントの関係で北陸に行くこととなり、東名阪とは違った趣のある地方都市に行ってきた。北陸には何度か来ていたものの、あらためて、のどかな雰囲気を感じた。仕事で金沢に移り住んだ友人によれば、金沢は戦争の直接的被害がなく、古くからの街並みが残されていて、また住んでいる人も、のどかな暖かい雰囲気があるという。かつて会社員から改めて北陸先端大学院大学 に転じた友人とは、一緒に仕事を多くこなしてきたが、彼は日本海でのロシア船重油事故などでボランティア活動などをした経験もあり、地元に密着したNPOの研究などをしていた。彼からは日本海のカニをいただいたことがある。地方重視が叫ばれる今日、地方や地元の活性化からビジネスを広げてゆくという発想も大切である。
◆抽象論ではない成功哲学に学ぶ
カリスマ体育教師・原田隆史氏のことは、成功哲学研究のグループで、以前より知っていた。というのは、かつてパナソニックや、ソニーなどに直接システムを売り込んでいた人からスポーツ選手のイメトレなどのノウハウについて伺ったことがあり、そのときに、原田氏の講演テープを聞いたことがあったからである(→ 感動)。氏は荒れていた松虫中学に乗り込み、7年間で13回の中学陸上日本一を実現し、その指導理論の一部を多くのトップアスリートも活用しているという。氏の成功哲学の話は、抽象論ではない。実績があるから、なぜか、納得させられてしまうのだ。。。(^^;)
ビジネス経営にも参考になりそうだ。最近日経BP社から、DVD書籍が刊行された。ビジネス最前線で活躍している方は、ぜひ、一読をお薦めしたい。。。http://ec.nikkeibp.co.jp/item/books/180300.html
◆香りの意外な活用法、それは ! なんと、イチロー選手も?
弊社でかつて刊行した香り通信の資料はおかげさまで、好評を博しているが、五感のうち、今後大きな可能性を秘めたビジネスとも考えられる、香りビジネスに関連して、面白いことを聞いた。有名なサッカー選手の中には、ペナルティキックのときなど、実は、試合前に染み込ませておいた香り(グレープフルーツ?)を、汗を拭いているように見せかけて、カイデイル。・・・つまり、香りを、うまく生かしているとのことである。ナイスプレー、ナイスシュート、観客の歓声をイメージしながら試合に臨んでいるというのだ。香りは瞬間のイメージをつくり上げるのに役立っているとのことである。(話によれば、イチロー選手も香りを活用しているとのことである。企業秘密?
) かつて、「時をかける少女」という映画があったが、ラベンダーの匂いを香ぐことで、タイムスリップするという話だが、嗅覚のある部分は脳の古い部分であり、論理ではなく、野性的本能につながっている。男性に比べ女性が香りに敏感といわれるが、香り、嗅覚の研究は人間の脳の仕組みの奥深さだけでなく、今後、商品企画においても、より深く関係してゆくと考えられる。(先の資料は、某大学院生の論文にも引用された) また、健康づくりの複合施設では、入場者も増えており、女性客に人気のある、香り、美容、健康食等のメニューが充実していることを先日、体感してきた。このような健康関連ビジネスも注目されるところである。
◆世界経済の動向と、今後のスタンス
一昨年半ば頃より、にわかに話題となってきたサブプライム問題は、今や、「100年に一度の金融危機」という言葉がでるほど、世界経済に深刻な問題を投げかけている。2008年7月に、1バーレル、140ドル台にあった原油が12月には、30ドル台になるなど、めまぐるしいものがあった。株価、為替、商品相場といった経済指標が急激な変動を見せており、トヨタ、ホンダ、ソニーなどの国際優良企業といわれた大企業が大幅な黒字から大幅な赤字になってしまったところも少なくない。有名企業においても人員削減、内定取り消しといったニュースが流れているが、世界的景気の動向とリンクしている部分があり、今後の経営を考えるには、よりグローバルな動きの予兆を感じ取る感性が大切だろう。その意味で、米国オバマ新大統領の経済政策には注意しておきたい。新大統領は、「Yes,
we can.」の格式高いスピーチが話題となったりしている。現在のところ、環境ビジネス、代替エネルギー関連等が大きく動いてゆきそうである。具体的には、「次世代のクリーンエネルギー対応技術の開発を進めて、500万人の雇用を創出する」、「2020年までに温暖化ガス排出量を1990年レベルに抑制し、2050年までに80%削減するキャップ・アンド・トレード制度を導入する」などの方針が打ち出されている。ただ確かに、今後のオバマ新大統領の政策は気になるものの、いっぽう、研究開発、商品企画、事業推進等の立場としては、自社の取り巻く市場環境を分析、すぐれた技術をベースに、着実なビジネス成長が遂げられるよう、まい進してゆきたいところである。
※弊社(AQUARIUS)は今後も先端テクノロジー、先端ビジネスに注目、市場の動向、ビジネスモデル、需要動向等の調査研究を通じて、クライアント企業、皆様のご期待に応えてまいる所存です。本年もよろしくお願い申し上げます。 ディレクター 子安
克昌
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